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異知と共に新しい事業の軸を作る。デザイン視点を取り入れ環境変化に即した事業と価値創出
キックオフセミナー

異知と共に新しい事業の軸を作る。デザイン視点を取り入れ環境変化に即した事業と価値創出

2021年5月27日(木)13:00~16:00に、「異知と共に新しい事業の軸を作る。デザイン視点を取り入れ環境変化に即した事業と価値創出」と題し、FUXIONのキックオフセミナーを開催しました。セミナーは基調講演と2つの選択トークセッションで構成され、計53名の方に参加いただきました。

1.基調講演

基調講演は高砂電気工業株式会社(以下、高砂電気)会長の浅井 直也 氏より、「Design for Innovation 新製品を創り続ける集団を、どう描くか?」のタイトルで、具体的な取り組み内容とそれに至る背景を解説いただきました。高砂電気は主力製品である流体制御バルブがロケットの姿勢制御用小型エンジンに採用されるなど「名古屋版下町ロケット」と呼ばれています。さらに経済産業省発表の2020年度版「グローバルニッチトップ企業100選」に選出されるなど、グローバルにおいて独自のポジションを確立しています。

講演では、イノベーションに資する高砂電気製品の強みとして
(1) カスタマイゼーション(個別設計)
(2) ミニチュアライゼーション(小型化)
(3) インテグレーション(統合化)
の3点が挙げられ、特に(1) カスタマイゼーションと(2) ミニチュアライゼーションの2点がキーワードとして解説されました。

高砂電気は62年前、創業者がたったひとりで創業したため、小口の特注依頼にも徹底的に対応しました。それを背景として生産体制が構築され、現在では1万機種以上・月産平均32.6個という超・多品種少量生産を可能としているそうです(カスタマイゼーション)。加えて、高砂電気は世界最小の電磁バルブやポンプを保有することで、軽薄短小が求められる航空宇宙分野や微小流体制御が求められる細胞分野に進出し、100倍以上の規模をもつ競合の大企業と差別化できているという内容も語られました(ミニチュアライゼーション)。ピカソが残したといわれる「Good artists copy, great artists steal.」という言葉を引用し、「差別化されているからこそデザインである」と語られました。現在売り上げを伸ばしているものをコピーして販売しても、独自性がなければコスト競争になってしまい、利益を出すことはできません。そこで、10年後に売り上げが10倍になる製品を見出すために顧客のニーズに徹底的に応え、ミクロニーズを数多く集めることでマクロなトレンドを把握することで、他社と差別化できるそうです。また、顧客の要望に応える際には、エンジニアが顧客が真に意図することを「洞察」することが重要であると語られました。デザイン思考には、①共感、②問題定義、③創造、④プロトタイプ、⑤テストという5つのステップがあります。エンジニアによる洞察は①・②に当たるステップを、ミクロニーズを数多く集めることは③~⑤に当たるステップを、事業全体として踏んでいくことで、デザイン思考を実践されているという気づきにつながりました。個々の顧客への特注対応は、一見デザイン思考に即したものではないように思われます。しかし、事業全体をひとつの試行段階と捉えることでマクロのトレンドを把握し、結果として高砂電気が独自のポジション≒グローバルニッチを獲得するに至っていることが示唆されました。さらに、グローバルニッチを確立することで、世界の先進的な企業から独自の依頼が舞い込むようになったそうです。これにより、世界のトレンドを先読みする精度がより高められるという好循環を回せているそうです。加えて、インターネットを仮想超巨大展示場に見立てることで世界中の顧客にアクセスできること、それにより打席に立つ回数を増やすことでミクロマーケティングを加速できることが語られました。

2.トークセッション1

トークセッション1は、BtoC事例として「チャレンジとその成功事例。ブランドデザインの意味と価値。」と題し、横山興業株式会社 取締役の横山 哲也 氏shokolatt branding CEOの鶴本 晶子 氏が登壇され、ミテモ株式会社 代表取締役 澤田 哲也のモデレートのもと開催されました。

冒頭、横山氏からは建材と自動車部品の製造が主事業の横山興業が、現在はシェーカーの世界的なブランドである「BIRDY.」を展開していること、本来はパーツを製造する金型をメンテナンスするための研磨技術を、シェーカーの内部を磨くことに転用していることの説明がありました。

続いて鶴本氏からは「デザイン思考」と「アート思考」という2つの視点から、ものづくり中小企業が世界のどのようなブランドになりたいか大風呂敷を広げる≒ブランドビジョンを構築し、リサーチ~アクションを経て製品開発につなげるお話を、これまで鶴本氏が携わってきたブランドを例にとって解説されました。

おふたりの取り組みの紹介ののち、モデレーターの澤田から「自社技術を活かして新たな事業を開発する際に、どのような点に着目しているか」という問いからトークセッションが開始されました。横山氏は「要素技術を因数分解していくことで、魅力的且つ模倣できない技術を見出す。そこからストーリー(≒ビジョン)を構築する」、鶴本氏からは「結果的には同じかたちになるが」という前置きのあとに「右脳的にビジョンを磨き上げ、言葉にすることで核を定める。そこから技術を因数分解していく」という対照的な答えが提示されました。技術の因数分解とビジョンの構築、それぞれを並行して走らせながら試行錯誤する点は両者に共通の内容であり、その過程においてどちらに軸足を置くかが異なるだけのようです。また、「ブランドの核」といわれる独自の強みをどのように見つけられるか、という聴講者からの問いには、横山氏からは「ブランドを立ち上げてから広めるまで、数えきれないほど技術について説明するが、それでも飽きずに伝えることができるか」、鶴本氏からは「事業者自身がいかにときめいて伝えることができるか」という回答が提示され、両者ともに事業を開発する事業者自身が情熱をもって他者へ語れる技術こそがブランドの核たりえるのではないかと示唆されました。

3.トークセッション2

トークセッション2は、BtoB事例として「中小ものづくり企業の実践者の声。異知との関わり。」と題し、基調講演に引き続き高砂電気会長 浅井 直也 氏y2.DesignConsulting 代表 上田 義弘 氏が登壇され、ミテモ株式会社 杉谷 昌彦のモデレートのもと開催されました。

上田氏による前半のプレゼン「企業を取り巻く環境変化とデザイン経営」では、DX(デジタルトランスフォーメーション)とデザイン経営の本質について語られました。経営環境の変化については、コロナ禍で消失したビジネス価値として「立地」が挙げられ、人流が減った中でwebサイトをいかに構築するか、インターネットという広大な砂漠の砂の一粒となったときに自社の特徴をどう定義し、会社の存在をアピールするか、について講演されました。また、大手の製造業がメーカーからサービスビジネスへと急激に業態を変化させる中で、これまで強固な関係を築いてきた系列群が崩壊し、「言われたものを安くつくる」ことのビジネス価値も消失した、と語られました。だからこそ、デジタル(≒インターネット、AI、IoT、データ活用)を使いこなし、イノベーティブな商品開発を実践することや各企業が大切にしている考え方や姿勢が問われていること、そして、そのことを実践するために「デザイン経営」が役に立つと語られました。

デザイン経営を実践するに当たっては、①ありたい姿(ビジョン)を明確にし、そこからバックキャストすること、②多様な能力をもったメンバーを組み合わせ最適なチーミングをすること、③事実と背景の因果関係を知ることで深いインサイトを得ること、④インサイトに基づいてアイデア創発するためには、これまでのシステム思考に加えデザイン思考とアート思考を活用すること、⑤プロトタイプをつくり評価改善を繰り返すアジャイル開発を行うこと、の5点が重要だそうです。また、ビジョンを確立するためには会社として提供できる「唯一無二」の価値を見出すこと、さらにそれを明文化することが大切であると語られました。企業アイデンティティが確立されると、ビジネスにおいて市場競争力が拡大すること(アウターブランディング)に加え、判断の基軸ができることによる経営の効率化(インナーブランディング)の効果もあるそうです。

続いてのトークセッションは、モデレーターの杉谷から浅井氏への「事業をつくる上で、洞察(顧客のインサイト)を得るにはどのような点が重要か」という質問から始まりました。浅井氏によると、個別の顧客対応においても洞察が必要になってくるそうです。その洞察を得るためには、情報の蓄積量≒経験が必要との言葉ありました。高砂電気では新しい問合せに対して、浅井氏も含めた情報共有・検討の会議を毎日開催しているそうです。顧客の要望に対してベテランの人などによる洞察を会議出席者で共有することで、結果的に新入社員でも洞察を得られるような体制をつくっているそうです。この事例を受け、杉谷からは本田技研工業のワイガヤとの類似性などが指摘されました。その後、上田氏からも「デザイン思考を実践するためには、集合知から新たな顧客価値を創出し、それをプロトタイプへ落とし込み、評価・改善を行う。そして、このサイクルを高速に繰り返すことが重要」とのコメントがありました。高砂電気において顧客の問い合わせに対する検討会議を毎日開催していることも、この上田氏のコメントに合致しているように思われました。また、浅井氏から「上田さんの話を聞き、インナーブランディングの重要性を改めて認識した。インナーブランディングをどうやったらうまく進められるか」という問いが上田氏へ投げかけられると、「インナーブランディングは大変に難しい」という前置きのあと、富士通に所属していらっしゃった際の経験談を披露されました。当時、ノートPCの開発で、設計部門が大切にしている設計基準とデザイン部門が求めるデザインの方向性やマーケティング部門のアピールポイントに齟齬があり、商品開発に関わる各部門が同じ方向を向いてなかったことで商品の特徴が曖昧になった事例が語られました。ブランドとして大切にしている価値観を共通認識として持つことで、デザイン・設計~マーケティング~営業販売までが同じ方向を見ることができる。結果として、対外的に発信する商品メッセージが強固なものになり、売れる商品になった、という話がシェアされました。ブランディングというと対外的に自社をどのように見せるかという点が着目されがちですが、インナーブランディングによる社内の価値観や一体感の醸成や意思決定における効率化も重要な要素を占めていることが示唆されました。

4.アンケートからの参加者の声

基調講演
 - お客様に「NO」といわない覚悟を持つこと、実践して自社のブランドコンセプトにすることなど感銘をうけました。自社分析の着眼点などの話も勉強になりました。
 - 高砂電気のグローバルニッチトップ企業としての経営理念・方針を明確に、分かりやすく話していただき大変参考になりました。
 - 組織のTOPとして物事を決め、組織を動かす。その際のマインドも含めオープンなお話で、自分ごとに考えるにあたり参考になりました。

トークセッション1
 - デザインしていく上での着眼点や構築がそれぞれ異なり、改めて「デザインすることは楽しい」と思えたすばらしい時間でした。
 - 鶴本さんと横山さんのブランドデザインへのアプローチの違いが対照的で興味深かったです。違いに対する議論を引き出していた澤田さんのファシリテーションも非常に良かったです。
 - それぞれの人が別の角度から物事をみることで、多くの発想が生まれることを改めて感じました。

トークセッション2
 - 「デザイン思考とアート思考」「イノベーションとの関係」「ブランディング」について理解できました。もっと勉強したいと思います。
 - デザインについて、体系立てられた説明が分かりやすかったです。
 - 浅井さまの世界観や理念、明確な行動・判断基準を実践されている「具体」と、上田さまのデザイン×論理的思考をミックスした「概念」の両方を学んだことで、自分が抱えている課題に工夫して適用したい、という気付きをいただきました。

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